2012年6月9日土曜日

専門家のためのアメリカ・タックス(米国税務): February 2008


米国のスピンオフ(3)

前回のポスティングではスピンオフ等の分割を非課税とする多くの条件の中から「Active Trade or Business」に関して触れた。基本的にDもSubも過去に少なくとも5年行っていた実績のある事業をスピンオフ後も継続しなくてはならないというものだ。モトローラの例で見ると「Mobile Devices」部門は5年どころか少なくとも数10年は行っているだろうし、残りの事業も5年はやっているだろう。Mobile Devicesのように技術革新が目覚しい業種だと、一言でMobile Devices事業と言っても5年前と現在ではその姿はかなり異なると思われるが同一事業という認定がされれば問題はない。どこまで事業内容が異なると新しい事業と位置づけられるのか等、Active Business規定は個々のケースに独特の事実認定に拠るところが大きい。

タイムワーナーはネットサービス部門「AOL」のネット接続(プロバイダー)事業を分離する意向だと伝えられている。AOLとタイムワーナーは後からくっついた企業であるが少なくとも5年は経過しているので、Active Business規定の条件を満たすことができるであろう。

Active Business規定は近年いろいろな進展があるのでもう少し落ち着いた時期にじっくり解説してみたい。今日のところはスピンオフの他の条件に移るとする。

*事業目的(Business Purpose)

この「Business Purpose」という条件はスピンオフばかりでなく、買収型の再編(A、 B、C、買収D等)にも適用されるのだが、買収の局面では他の条件と比べると何となくハードルが低い。しかし、スピンオフの局面ではかなりの牙を持つ条件となる。

2012年6月1日金曜日

リベラリスト - LIBERALIST -



◆菅首相は消費税を増税しても、税の使い道を誤らなければ、経済を成長させることができると主張している。どの政党が政権を獲得しようが、この「税の使い道」を誤らない保証はあるのだろうか?

◆景気対策として講じられる財政政策・金融政策の違いは、短絡的に表現すると、政府支出によって需要を生み出し景気を刺激するか、金融緩和を通じて銀行等金融機関による投資を喚起し、景気刺激策とするかである。

◆2000年代に金融政策の中心となった「量的緩和政策」は、統計上は戦後最長の経済成長を実現したが、国民が好況を実感するには至らなかった。金融機関は資金をベンチャー企業への投資等、経済成長のための投資ではなく、国債等を購入することで政府に投資した。投資によって利益が利益を生む資本主義 の機能は、何故か非営利組織であるはずの政府に託された。

◆そして、現在、政府は財政政策に軸足を移している。政府支出はGDPの一部であるため、政府支出が増えれば、統計数字上のGDPは増えるだろう。しかし、撤回された「アニメの殿堂」や事業仕分けで明らかになる税金の無駄遣いは、財政政策、すなわち「税の使い道」への信頼性を失わせている。

◆現在の不況は、マクロ経済的には総供給が総需要を上回る、いわゆる「デフレ・ギャップ」が原因ではないかとの議論が盛んだ。下の図の需要,離薀ぅ鵑閥ゝ襪離薀ぅ鵑慮鯏世任△譴弌高い価格で多く消費されるが、需要△里茲Δ房要が減少すると、価格は低く、消費も少なくなる。

◆このデフレ・ギャップの議論に立つと、理論上は、日本には十分な供給能力がある、にもかかわらず、需要が少ないためにモノが売れない、ということになる。そこで、需要を押し上げ、「デフレ」からの脱却が必要と盛んに宣伝されている。しかし、本当に供給能力が高いのだろうか?そんなに欲しい物が実感として世間に溢れているだろうか?

【需要が低いとは限らない】

◆一般生活に限って言えば、ユニクロで服を買い、家具はニトリで、文具等は無印良品で、食材はスーパーのプライベートブランド(イオンのトップバリュー等)で事足りる。自動車も家電も短期間で故障しないため、次から次へと新しいモノを買う必要もない。

◆日本の労働者の最大の需要(ニーズ)は、モノではなく、まず休� ��ではないか。はっきりいって、そんなにガンガン仕事をしたくはない。少なくとも筆者も筆者の知人の多くも休みたい。休みを取って家族と共に過ごす、あるいは趣味に打ち込みたい人は多いはずだ。